昨年末に根津甚八さんが亡くなりました。右目の筋肉の病気を患ったり、その後はうつ病、腰痛にも悩まされ、、2010年には俳優引退を発表されていましたが、まだ69歳ですから非常に残念です。
唐十郎さんの「状況劇場」の看板俳優として活躍されていた根津さんですが、僕が根津さんを初めて知ったのは、「任侠外伝・玄界灘」(1976 唐十郎監督)でした。当時の僕は日本映画にいよいよハマりこんでいく時期で、もう頭の中は邦画のことでいっぱいで、どんどん未知の作品を吸収していたのです。そんな頃、何かの映画を観に行ったときにこの「任侠外伝・玄界灘」の予告編が流れていて、そこに映った根津さんの顔に、一発でガツンとやられてしまったのでした。たしか殴られているような、そんなシーンで不敵な表情を浮かべるのですが、それまで観たことのない反逆的でニヒルなものを感じたのでした。あとになって思えば、「男の色気」というものだったのかもしれません。とにかく、予告編で一瞬見たその表情を観るために、しばらくしてから公開された「任侠外伝・玄界灘」に足を運んだのです。
当時TVっ子でもあった僕は、その翌年、1977年にはテレビの連続ドラマで根津さんに再会します。TBSの木下恵介アワーで放映された「冬の運動会」です。向田邦子さんの脚本で、就職先も辞めてしまったり、親とうまくいかなくて居場所のない青年が、ふと知り合った靴修理の老夫婦の家に入り浸るようになり、そこでは本当の息子のように素直に自分を出せるという話でした。靴屋さん夫婦が大滝秀治さんと赤木春恵さんだったかと思います。青年の祖父を志村喬さんが演じていて、この真面目そうなおじいちゃんが、うんと年の離れた若い愛人に会いにいったりというエピソードもあり、疑似家族の方が本当に居心地よく本当の家族のようだ……という内容がとても面白かった。このドラマで、親からはひねくれているように見られながら根は優しい、そんなナイーブな役を演じた根津さんの新たな魅力が引き出されたと思いました。
その翌年にはNHK大河ドラマ「黄金の日々」に石川五右衛門の役で登場、お茶の間での認知度も一気にあがりました。これには唐十郎さんも出演していたり、ピラニア軍団で人気の出た川谷拓三さんなども起用され、うまいキャスティングをするなあと感じたのを覚えています。
その後、「影武者」(1980 黒澤明監督)、「乱」(1983 黒澤明監督)への出演、麻薬に溺れていく男を熱演しキネマ旬報主演男優賞を受賞された「さらば愛しき大地」(1982 柳町光男監督)など映画で大活躍されました。
多くの作品で根津さんを起用した、石井隆監督の熱望に応えて、一昨年「GONINサーガ」(2015 石井隆監督)に一作だけ復帰、かつての「GONIN」(1995 石井隆監督)と同じ役で久々にスクリーンに登場したのが最後になってしまいました。ご冥福をお祈りいたします。    (ジャッピー!編集長)