テンプターズの主演映画は「涙のあとに微笑みを」(1969 内川清一郎監督 )1本だけ。タイガースやスパイダースと比べると少ないのは、レコード・デビューも両者より遅かったこともあったでしょう。この映画の公開された1969年3月というと、もうグループ・サウンズのブームも終息に向かっていた頃です。1967~1968年にかけて爆発的な人気を誇ったGSブームもあっという間にピークを越えてしまっていた時期です。
それと、メンバーたちもあまりノッていなかったのではないかな……とも思われます。当時のグループとしては珍しくメンバー(松崎由治さん)のオリジナルでデビューし、あくまで自分たちの音楽にこだわっていたような感じがありました。この1969年暮れには南部サウンドの聖地、メンフェスの一流ミュージシャンをバックにアルバムを発表していますし。
僕もこの「涙のあとに微笑みを」は観ているのですが、あまり印象が残っていないのです。母子家庭の親子を新珠三千代さんと萩原健一さんが演じていて、ショーケンがすごい母親思いの高校生役で「ああ、これのモチーフとなった曲は「おかあさん」だな」と思ったことは憶えています。「おかあさん」という曲は、♪オー、ママ、ママ~というサビが当時子供だった僕の耳にもこびりついたナンバーで、たしか「エメラルドの伝説」の次のシングルだったと思います。公募により、ファンが作った歌詞に松崎さんが曲をつけたもので、当時のグループ・サウンズに対するPTAとか大人たちからの風当たりを和らげようとした曲だと言われていました。
母親を手伝いながら、同級生たちとバンドを結成するのですが、そこには魔法?を使える女の子が関わっています。これがちょっと余計というか……テンプターズと人気を二分していたタイガースにはこういうファンタジー的な展開が多い――「世界はボクらを待っている」(1968 和田嘉訓監督)の宇宙から来た王女、「ハーイ!ロンドン」(1969 岩内克己監督)の悪魔(何と藤田まことさん!)のですが、テンプターズは曲もR&Bぽいイメージが強いし、ファンタジーぽい要素ははずして、普通の青春映画にした方が良かったように思いました。
それでも、ショーケンが演じたナイーブでちょっと甘えん坊的なキャラクターは、のちの「約束」(1972 斎藤耕一監督)や「恋文」(1985 神代辰巳監督)などにもつながるように思います。数々の映画で個性的な演技を見せたショーケンの俳優としての胎動が感じられる作品と言ってもいいかもしれません。
ちなみに、テンプターズの曲以外に、ショーケンが文化祭の物まねコンテストか何かに出て、ピンキーのコスチュームで「恋の季節」を歌うレアなシーンがあります。女の子に魔法を授ける神様役は堺正章。テンプターズは、スパイダースの田辺昭知さんにスカウトされ、スパイダクションに在籍していた縁での特別出演でしょう。
(ジャッピー!編集長)