「脱出」(1972 和田嘉訓監督)の冒頭に2img_0
によって唄われたこの曲は、元々、「若者はゆく 続・若者たち」(1969 森川時久監督)の挿入歌でありました。♪何もしないで生きてゆくなら~ それはたやすいことだけど~ と続く歌詞に、学生運動の挫折、高度経済成長の中で片隅に追いやられた者たちの諦念などが表されているようで、いかにも昭和の匂いを感じてしまいます。のちに天知茂さんがカヴァーし、自身のTVドラマ「非情のライセンス」の主題歌となって毎週流れたので、天知さんの曲と思っている人がいるかもしれませんが、ザ・ブルーベル・シンガーズがオリジナルであります。
ザ・ブルーベル・シンガーズの別の曲が印象的だったのは、「野獣都市」(1970 福田純監督)。1960年代末期から狂い咲いた東宝ニュー・アクションの一本です。ある大学の工学部の研究室にいる黒沢年男は射撃の腕を見込まれて三國連太郎演じる製薬会社の社長の運転手に雇われます。三國は昔、麻薬のブローカーで儲けた過去があり、元の仲間から脅されていますので、黒沢は運転手というよりボディガードです。元の仲間が頼んだ暴力団が麻薬取引の証拠を握ります。暴力団のボスは大滝秀治(この頃の大滝さんは冷血動物のような不気味な悪役が多かった)で、配下に青木義朗。現役のヤクザもビビったという鋭い眼光で黒沢をリンチにかける場面など本当に怖い! 三國の工場が放火され、窮地に陥った三國は親会社の社長に援助を頼み、自分の娘(高橋紀子)をその社長の息子(伊藤孝雄)の嫁にさしだします。政略結婚に嫌気がさした娘は黒沢をモーテルに誘います。このあと、暴力団にさらわれた高橋を黒沢が奪還しますが、三國は捕まり廃人になってしまいます。三國を父親のように慕っていた黒沢ですが、変わり果てた姿を見てられなくて三國を撃ちます。そして黒幕(北竜二)の邸宅に突っ込んで復讐を果たし、非常線を突破した黒沢はアメリカン・ニュー・シネマっぽいラストを迎えます。
リンチのシーンは、黒沢主観のカメラで、スパナで殴る青木の顔がぐにゃりと歪む映像処理、夢の島における銃撃戦などなかなか見どころが多いです。大藪春彦原作というと村川透・松田優作コンビを思い浮かべる人も多いでしょうが、この作品も実にハードボイルドだどぉ!
映画の冒頭、学生運動の映像で始まりますが、「個」としての闘いに移っていく時代の空気が漲ります。ザ・ブルーベル・シンガーズによる主題歌は「疎外者の子守唄」。♪若者はどうして孤独の闇にいるのだろう~ という陰鬱な歌詞がポスト全共闘時代のムードにぴったりハマります。   (ジャッピー!編集長)