「職業としての小説家」(新潮文庫)、「女のいない男たち」(文春文庫)翻訳本で、自身の短編がボーナストラック風についている「恋しくて」(中公文庫)と、このところ、村上春樹の文庫が立て続けに出るなあと思っていたら、ノーベル賞の季節だからですね。きっと各出版社は既に「祝・ノーベル文学賞!」と書かれた帯を刷って、いつでもかぶせるように準備していたことでしょう。こんなに毎年、期待されるのも気の毒です。
さて、そのノーベル文学賞、ボブ・ディランが受賞しました。何年か前から、受賞するのではないかと言われてきましたから、そんなに驚きはないけれど、やっぱり嬉しいものです。
僕がディランを聴くきっかけは、吉田拓郎でした。「よしだたくろう・オン・ステージ・第2集」というライヴ・アルバムがあり、これは延々と「人間なんて」を唄う、というよりガナり続ける模様が収録されていて有名なアルバムなのですが、そのため2枚組になっていて、小遣いでは手が出ませんでした。それで、友達にカセット・テープに録ってもらい聴いたのですが、そこにやはり長尺の「準ちゃんが吉田拓郎に与えた偉大なる影響」という曲が入っていて、この自伝的な一曲にガツンとやられてしまったのです。で、調べてみると、それはボブ・ディランの「ハッティ・キャロルの寂しい死」という曲のメロディに拓郎が詞をつけたものと分かり、それで、その曲が収録されている「時代は変る」というアルバムを聴いたのでした。images何だか、痩せた男が苦悩を滲ませるような表情のポートレートをジャケットにしたアルバムに入っていたその元の曲は、黒人のウェイトレスが些細なことで白人男性に殴り殺された実際の事件のことを唄っていて、僕はこの曲にもガツンとやられたのでした。何しろ、思春期だったものですぐにガツンとやられるのです。そのあと、ガロが「学生街の喫茶店」の中で、♪片隅で聴いていたボブ・ディラン~と唄ったのでした。
そんな吉田拓郎経由のディランとの出会いを思い出しました。たしか、ディランの曲を勝手に使ったとか、拓郎自身が発売を許可しないままリリースされたとかの理由で、この「よしだたくろう・オン・ステージ・第2集」は廃盤になってしまい、CD化もされていません。ボブ・ディランのノーベル文学賞受賞記念で出してくれませんかねえ。
(ジャッピー!編集長